私は猫
「勝手に家を飛び出して、ママに仕事も住む所ももらって、それに恋愛…だなんて、私にはできません」
「ヒナ」
菜々子さんは眉を下げて目を細めた。
「それに、私がホステスやってるって知られたくなかったんです。ちょっとは軽蔑したと思いますし、されるって思ってました」
私は自分でも歯止めがきかなくなるくらい話し続けた。
それを菜々子さんは黙って聞いている。
「そうか。だから南さんに」
私はそこまで言い掛けて、口から出そうになった言葉を引っ込めた。
ホステスである私としても、私という人間としても、南さんは私と向き合ってくれたから。
だから、あんなに舞い上がったり気持ちがうわずったりしていたんだ。
「ん、なあに」
「いえ、なんでも。それより彼にやり直さないかって言われて。私はそれどころじゃないし、さっきも言いましたけど」
私は一息置いてまた話し始めた。
「そういえば、彼医者を目指してて。私が看護師になって一緒に病院やりたかった…って。夢を聞いて嬉しかったけど、やっぱり私のやりたいこととは違うって」
「本当に好きな人じゃないからだな。ヒナが元カレのこと大好きだったら、応援するんじゃない」
「応援はしてます!でも何か違う。同じ、好きな人と一緒になるという意味で…だったらやっぱり違います」
菜々子さんはそれを聞いてニンマリと笑った。
「ヒナ、あんた南さんのこと好きでしょ」