【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
自分の心の中を整頓しながら、
閉じこもったトイレで、
耳にした女性陣達の話し声。
その話の中で、
祐天寺さんが言い触らした
私の話題が、
捻じ曲げられて語られる。
祐天寺昭乃と言う
婚約者がいるのを知りながら、
身の程もわきまえず、
新郎の恭也さんに言い寄った存在として。
そして……祐天寺さんの眼鏡を通して
見つめる、その彼女の親友たちは
好き放題、私の悪口や文香の悪口を零す。
トイレと言う閉ざされた空間の中で
メイク直しをしながら。
個室から出るに出られなくて、
洗面室の声が遠ざかるまで
その部屋の壁に持たれながら
やり過ごした。
声が遠ざかったのを感じて、
個室のドアを開けて、
洗面所へと向かう。
ただ水を捻って、
水音を響かせながら
私は鏡に映る自分自身を
ボーっと眺めてた。
「神楽っ!!」
慌てて駆け寄って来た文香は、
蛇口を閉じて、
私の正面に立つ。
「ねぇ、文香……」
小さく告げると、
文香に倒れ掛かるように
力が抜けていく体。
目が覚めた時には、
ホテルの一室。
「神楽、気がついた?」
そう言って
話しかけてくれる文香。
「勇生君が借りてる部屋」
「披露宴は?」
「始まってるわよ。
でも行かなくていいじゃない。
こんなに倒れるまで、
アンタが無理する必要何処にあるのよ」
そう言ってくれた文香。
だけど目が覚めた私には、
行かないって言う選択肢はない。
慌てて身支度を整えて、
披露宴会場へと駆けつける。
そして近くに居た
スタッフに声をかけた。