【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

18.ぬくもりのなかで -神楽-




真人と恭也君と私。


恭也君が、動物園のチケットを
入り口で購入して、
私に手を差し出す。


相変わらず、
恭也君に肩車をして貰ったままの真人は
高くなった視界に、無邪気に声をあげて笑う。




「ママ、キリンさん何処にいるかな?
今のぼくだと、キリンさんより高い?」




突拍子もない突然の質問に
即答できないでいる私。


そんな真人に、
優しい眼差しを向けて、
話しかける恭也君。





そんな微笑みあう二人を
私は、引き裂こうとしてる。




彼の生活を守る為。

彼の家族を守る為……。



そんな言い方は
どれだけ綺麗ごとに思えるだろう。


だけどこれは、
私の罪滅ぼし。


懺悔。



「神楽さん?」



ふと、私の歩く速度が
遅くなったことに
恭也君の歩みが止まって
名前を呼ぶ。



「ママ?
 ママ、つかれたの?」


そうやって恭也君の肩に腰掛けたまま
私に手を伸ばす真人。



「大丈夫よ。
 真人……、今日は楽しみましょうね。

 一日限りの家族なんだから」





わざと自分自身にも
言い聞かせるように声に出す。




「うん。
 今日は、僕にもパパがいるんだ。

 ママ、キリンさん見たら
 今度はママが行きたいところに行く」



そう言って真人が、
私の手掴んで、恭也君の手と結びつける。


「パパがママのこと
 しっかりつかまえておかないと行けないよ。

 勇生先生が話してくれたの。

 大切な人は、ちゃんと自分でつかまえなさいって」


真人が紡ぐ言葉が、
私に驚きしか与えない。



真人……知らない間に、
貴方は、自分の父親が恭也君だって
気が付いてるの?



それとも真人の中に流れる
彼の血が、そうさせているの?




家族で居られる時間は、
夢だった。



憧れだった。



あの日、自分の手で止めてしまった
時計を再び動かした私。



真人にも……本当の家族としての時間を
教えてあげられた。



名乗りあうことなんてさせないけど、
それでもこの子は……
本能で感じ取ってくれるのかも知れない。



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