【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】





恭也君に出逢えて、
勇生君に、雄矢君に助けて貰えてよかった。


私は一人じゃないって思えたから。

私と恭也君の本当の想いを
応援してくれている、
大切な人が居てくれたことに気が付けたから。


そんな大切な人たちに、
命を救われた真人。


大切な人たちは、
私と恭也君の宝物を守ってくれた。


私のかけがえのないものを
死神から取り戻してくれた。



段ボールに詰め込んで
自宅へと発送した荷物の中には、
リズ夫人が作ってくれた
真っ白なウェディングドレス。


そのドレスに込められた
大切な人たちの意味が伝わるから。



だから……
今の私は本当に幸せ。


この幸せを抱いて、
私は……今度こそは、
自分の気持ちとしっかりと向き合う。



怖がって、逃げ出すのではなく
自分自身を償うために。






その力を充電するためにも
今日、この時は精一杯楽しみたい。



私と恭也君と真人。


第三者の視界に映る私たちは、
幸せな家族風景に映るだろうか?




真人の大好きなキリンを見て、
購入したばかりのカメラで写真を撮る。



真人と恭也君の2ショット。
私と真人の2ショット。

そして……見ず知らずの人に頼み込んで
取って貰った、大切な家族写真。




『いい笑顔だね』




そう言ってくれた、撮影者の言葉にすら
心がドキドキする。


真人の笑顔が、
私と恭也君を笑顔にしてくれる。



「パパ、ママ次はあっち」

「あぁ、約束だからな。
 遊園地にも行こうな」




少しずつ元気になってきてるとはいえ、
完全には体力が戻っていない真人を
両手に抱きかかえて、
遊園地までの道程を歩いていく恭也君。



そんな二人より先に、
受付でチケットを購入する私。


チケットを購入する。

ただそれだけの事なのに、


『大人二枚と小学生一枚』


僅かそれだけのオーダーで
ドキドキしてる私。


いつもとチケットの注文が一人分増えるだけで、
恭也君の存在を意識してしまう。



「神楽、お待たせ」



チケットを購入して振り返った私の名を呼ぶ
恭也君は、
私の名を久しぶりに呼び捨てにして……。


ただそれだけなのに……
嬉しくて、じんわりと涙が滲みだす。

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