【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】






TVの大画面に映っているのは、
ピアニストの結愛(ゆあ)。
そして結愛の娘の冴香(さえか)。


最近、ワイドショーを騒がせてた
ピアニスト親子の映像だった。


次に彼女に視線を向けたとき、
彼女は両手で胸元の洋服を掴んで
息苦しそうに
過呼吸の発作を起こしてた。






彼女を抱き寄せながら、
過呼吸に効果的な
紙袋の代用になりそうなものがないか
彼女の鞄の中を探す。





「どうかしました?」




ふいに電気屋の制服を着た
スタッフが声をかけてくる。




通りすがりの人が、
店内のスタッフを呼びに行ったようだった。





「すいません。
 
 過呼吸の発作で、
 お店の紙袋分けていただけますか?」



スタッフはその言葉を受けると、
すぐに店内に戻って紙袋を手に駆け寄ってきた。



受け取った紙袋をすぐに広げて
神楽さんの口元へ。



次第に呼吸が落ち着いてきたのを
見届けて、しがみついてきた彼女を
ゆっくりと抱き寄せた。






「気分はどう?」




そう問いかけた俺に、
彼女は……少しだるそうに笑い返した。





「すいません。
 ありがとうございました」



電気屋さんのスタッフにお礼を告げると、
救急車の手配を断って、
そのままタクシーを手配する。




それと同時に、
自宅へと電話を掛けた。




発作の後だから……
念のために親父にも
診てもらってたほうがいいと思ったから。



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