Only One
―――『ボス!』
芹那が連れ去られた次の日の午後。
藤咲家宅に、音海があわただしくやってきた。
「――見つけたの?」
『はい…っ!今、事務所に連れてきてます。――どうしますか。』
昨日から、一睡もしていない智愛と郁人。
それは音海も同じだ。
本当ならば、郁人と智愛は限界の筈である。
なぜなら、昨夜、郁人は薬物を混入させられ、暴力も受けている。
それに対し、智愛もスタンガンで気絶させられている。
それなのに、こんなにも二人が頑張っているのは――
他の何でもない、芹那の為である。
「――私が行く。」
「俺も行くよ。」
ソファから立ち上がった智愛に続いて、郁人も立ち上がる。
「兄貴はここで――」
「いや、この落とし前はきっちり、つけさせてもらう。」
そう言った郁人は、普段では考えられない程、ドスの利いた声で鋭い目つきでその先にあるモノを睨んでいた。
「――わかった。」
智愛がうなづくと、二人は家を出る準備を始め、事務所に向かった。
(芹那…今から、兄貴と一緒に迎えに行くから。)
智愛は芹那の無事を祈り、音海の車に乗り込んだ。