亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『理』の力を使うのは本当に久しぶりだ。上手く出来るか分からないが………。



「………全員、僕から少し離れて…」


散った散った―、とイブに促されるまま、二人はダリルから少し離れた。



















「―――…………“解”」



ピリッと空気が震えたと同時に、ダリルはスッと目を見開いた。
































口が、突っ込んで来た。


「……うわっ…!?」

ガガガガガ―…と地面を削りながら突進して来る巨大な口。
あまりにもインパクトのあるその光景と凄まじい殺気に怯みながらも、キーツは身体を捻って紙一重で、同時に滑り込んで来た腕を跳んで避けた。

身体を倒しながら、ほぼ一直線で突っ込んで来る。


先程、片腕の肘から上を隙を狙って切断した。
青い肉と黒い骨が歪な切断面から覗いている。出血はあまり無かった。

まさか己の耳飾りで片腕を無くすとは思いもしなかっただろう。
イヨルゴスは苦しそうに呻き声を上げたが………痛みなど忘れたかの様にすぐに向き直ってきた。

………痛みを忘れた……いや、もしかしたら……腕を無くしたことも忘れたのかもしれない。

怪物は長い間ずっと………狂っている。

瞼が無いため、始終表にさらけ出された丸い目玉は、ビクビクと痙攣し、青く充血している。

避けた口からは、だらしなく唾液が滴り落ちていた。

………その異臭の凄まじいことといったら…。





怪物は再び、残った片腕で半身を支え、突進の構えを見せた。

右か、左か、どちらに避けようか。







怪物の身体が、グラリと傾いた。


同時に、キーツも身構えた。
< 1,116 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop