亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「…………っ……………………」
キーツは大きく目を見開き、胸を反らして空を見据えた。
キーツを貫く真っ黒な剣の柄を握るのは。
………千切れた、怪物の長い長い奇怪な舌。
開いたまま動かないイヨルゴスの裂けた口から、それは伸びていた。
生気など無くなってしまった身体とは別の生き物の様に、その舌は、ズブリとキーツの身体から剣を抜いた。
………噴水の如く………真っ赤な鮮血が、溢れ出した。
………グラリと、前のめりに傾いたキーツを、倒れる前にローアンはひしと抱き留めた。
ガクンと垂れた頭は肩に寄り掛かり、キーツの全体重が、ローアンに預けられた。
ずり落ちてしまいそうなキーツの背中に両腕を回し、しっかりと………強く……………………震えながら、抱き締めた。
「………嫌。………嫌……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……嫌………嫌ああああああぁぁぁ………!!………………あああ………あっ…………!!」
怪物の舌は剣を離し………動かなくなった。
パラサイトの太い枝がイヨルゴスの半身を貫いた途端、その動かぬ巨体を物凄い速さで引き摺り込んでいった。
荒野から、化け物は影も形も………無くなった。
「………キーツ……?………キーツ、キーツ……嫌……………もう嫌…………嫌だ………もう嫌なの………もう……誰一人……傷つかないで………」
いなくならないで。