亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
会えたのに。
君に、また……会えたのに。
………………ローアン……泣かないでくれ。
………君は……泣いては駄目だ……。
………駄目なんだよ。
―――空が、白んできた。
雪を落とす厚い曇り空の合間から………。
………金色の光が、覗いた。
真っ黒な沈黙の森を。
谷の底を。
夜明けを待っていた街を。
この、荒れ果てた大地を。
………照らしていく。
暁の空が、戦場の頭上を覆っていく。
荒野で蠢いていた影の群は、柔らかな朝日を浴びた途端………。
………静かに、消えていった。
幻であったかの様に。
うっすらと、少しずつ………見えなくなっていった。
消えてしまった影に、呆然と立ち尽くす生き残った大勢の兵士達。
丘の上や荒野のあちらこちらに、返り血塗れの兵士が見えた。
荒野は嘘の様に、静かになった。
真っ白な雪と、真っ黒な花が舞う、静かに大地で。
………一人の姫君は、泣き叫ぶ。
ただただ、涙を流す。