亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ローアン。
……君は…綺麗だ。
………とても……綺麗だ。
………暖かい。
君といると……何故だかとても…安心するんだ。
昔と変わらない。
子供の頃と、変わらない。
愛しさも。
恋しさも。
……切なさも。
初めて君に会った時と、この胸の高鳴りは、やっぱり変わらないんだ。
変わらないんだ。
ローアン…。
俺は………君に言いたいことがあるんだ。
幼い頃の約束を、覚えているだろうか。
子供の、小さな約束。
約束。
………………脇に垂れていたキーツの腕が、ゆっくりと上がり…………ローアンの細い身体を、そっと包んで……………抱き締めた。
一瞬、ローアンは驚いて目を丸くした。
泣き叫び過ぎて嗄れかかった声で、ローアンは震えながら耳元で囁いた。
「………キーツ…?…………キーツ………聞こえる…?…………………………キーツ?」
「………」
ローアンを抱き締めるキーツの腕に、より力が込められた。
華奢な身体を、壊してしまわない様に。
愛おしむ様に。
キーツは笑って…………小さな………小さな声で…………。
……………囁いた。