亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
激しく狼狽するローアンとは裏腹に、一向に動く気配の無いキーツ。
早くどっか行け!!散れ!!
「…………っ…!!…………………何の反応もされないのが一番耐えがたいわ!!……嘲笑するなり罵倒するなり何か言ったら………!!」
とうとういたたまれなくなったローアンは、ルアの後ろから赤らんだ顔を出し、非難するべく指差して立ち上がった。
「―――――………………………綺麗だ…」
――――――……は?
それは……突然。
………ポツリと投げ掛けられた、きっとローアンの辞書には載っていないであろう予想外の言葉に、思わず呆気にとられたローアン。
当のキーツは……。
……顔が、真っ赤だった。
……大きく見開いた瞳で真直ぐローアンを映したまま、ピクリとも動かない。
ただその色鮮やかなオッドアイだけが、小刻みに揺れていた。
………………………き…………きれ……。
…ようやく言葉の意味を理解した途端、カッと顔が熱くなった。
拳をギュッと握り締めた、わなわなと震える唇を何とかして動かそうと躍起になる。
「……………き……………きれ……………………………………な、何を急に…!」
「…………綺麗……だ」
「…………っ………」
心臓が、飛び跳ねた。一度なら聞き流せるが、二度目は避けられない。
あまりにも真直ぐに注がれる視線に耐えきれず、ローアンは動揺を隠しきれないまま俯いた。