亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ローアンは一瞬ビクリと身震いしたが、すぐにキーツの手を振り払おうとした。
「………………助けなど……要らん……!」
「……………………人の親切は素直に受けるべきだぞ…………ほらっ…」
「…………うわっ…!?」
強情なローアンに顔をしかめつつも、キーツは掴む手に力を込めて、グイッと引っ張った。
軽いローアンの身体はいとも容易く起き上がり、あっという間に垂直に立つことが出来た。
……支え台役から解放されたルアは、今の案外辛かった悪夢を繰り返さないために、二人の間からそろそろと抜け出し、やや離れた所に避難した。
………自然、向かい合う形となった二人。
情けでは無く『人の親切』によって助けられてしまったローアンは、俯いたまま黙りこくってしまった。
………何だか…悔しい。
……………まるで自分が………どうしようも無い程……意地っ張りな子供の様で……。
(………情け…ない…)
キーツはそっと手を離した。
頭一つ分以上小さい彼女。顔を伏せている彼女が、こんなにも近くに………目の前にいる。
………長い睫毛。
………少し広めに開いた襟元からは、日夜訓練をしていた兵士とは思えない様な、きめ細かい真っ白な肌が覗いている。
(…………本当に…………綺麗だ………)
……ふと、ドレスの裾を握る彼女の手を見ると…………小刻みに震えている。
(………ついでに、強情だ………)
悟られない様に苦笑し、キーツは小さく囁いた。
「…………情け……ではないからな」
「………」
キーツはそれだけ言って、彼女の前で踵を返した。