亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
キーツは部屋から出て行くのか、そのまま扉の方へと歩いて行く。ちょっと立ち止まって、ルアの頭を優しく撫でた。
…………何も言わずに……私は………見送るつもりか……?
……………強情な女め……!!…………礼さえ一つも……言えないのか……!!
決心した様にパッと顔を上げ、一度軽く自分の頬を叩き、声を振り絞って呼び止めようと口を開いた。
去り行く背中に向かって。
「―――………あの……………キーツ……」
………………。
……………………あ。
ローアンは再び顔を真っ赤にし、わななく口を両手で塞いだ。
…………つい……。
……………つい……名前を…言って……。
今のは……気付いていないでほしい。気付いていても何事も無く流してほしい。
二度目のパニックを迎える寸前の状態で、ローアンは恐る恐る、呼んだ男に視線を向けた。
呼び止められたキーツは、足を止めていた。
そしてゆっくりと………………振り返った。
…………向けられた表情は明らかに…………………驚いていた。
「………………今………………何て………」
その瞬間、ローアンは二度目のパニック状態に突入した。
何でもない……何でもない!!、と手を顔の前で激しくブンブン振り、もう片方の手で赤面を必死で覆った。