亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「了~解。…………お前も無茶するなよ。…………あちらの大将と鉢合わせしても…………まともに殺り合うなよ………すぐに応援を呼べ」
危険だ。
大将であるキーツの首一つで、勝敗は決まるのだ。
「……………そういや…………嬢ちゃんには言ったのか?………前日の退去の話…」
その問いに、キーツは頭を抱えた。………まだ言っていない様だ。
「…………その……絶対に拒否されそうで……なかなか…な…………………しかし何がなんでも実行してもらう……」
「………話し辛いというか………昨日か一昨日位から一言も話してないだろ?」
「……………」
うっ、と口ごもるキーツに、無表情のオーウェンがボソリと耳元で囁いた。
「…………ムッツリめ」
「……………む……………………むっつ……!?」
「とにかく!!………これも作戦なんだ。嬢ちゃんの正義感という名の我が儘に付き合っている暇は無い。そこは総団長であるお前がビシッと言ってやんな。………………ついでに続きもしてこい」
バサバサッ………と、キーツの手元から書物や古文書の類が一斉に落ちた。
………拾おうともしないキーツは、赤面で硬直している。
「…………………続きって何ですか?」
何も知らない純粋な少年リストは、触れてほしくない箇所を見事に抜粋して尋ねてきた。
「…………………………………………………………オーウェン…」
真っ赤なまま、プルプルと震える手で、鞘から剣を抜こうとするキーツ。
この殺気は本気だ、といち早く感づいたアレクセイが、後ろからキーツを押さえた。
暴れ出すキーツの前で、ほくそ笑みながら口笛を吹くオーウェンさん。
「ハッハッハッ。ラブカウンセラーの目は千里眼なのだよ。設定上」