亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



そう。

彼は私が会いたいと思った時、独りで寂しい時、怖くて仕方ない時、必ず…必ず、来てくれた。




視線の先には彼の姿。



………ありがとう、と言いたかったけれど………彼に会えただけで、充分だった。






これで、目を瞑ることが出来る。

………もう…大丈夫。











幼い私は、そう思った。















彼の存在がいかに大きくて、必要だったか……………改めて分かったのだ。



………応えてくれるかの様に、彼はいつも側にいた。


会いに来てくれた。




寂しいな。悲しいな。


………独りで泣いている時。




………振り返ると、そこにいるのは………。






















ルアがピクリと頭を上げた。
背後から物音が聞こえ、遅れて振り返ると……………………………………思わず、笑ってしまった。



















「―――……………………………泣いているのか……?」




















………そう。

…やはり、振り返ると…。



















……………そこにいるのは、彼だった。









< 887 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop