亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
そう。
彼は私が会いたいと思った時、独りで寂しい時、怖くて仕方ない時、必ず…必ず、来てくれた。
視線の先には彼の姿。
………ありがとう、と言いたかったけれど………彼に会えただけで、充分だった。
これで、目を瞑ることが出来る。
………もう…大丈夫。
幼い私は、そう思った。
彼の存在がいかに大きくて、必要だったか……………改めて分かったのだ。
………応えてくれるかの様に、彼はいつも側にいた。
会いに来てくれた。
寂しいな。悲しいな。
………独りで泣いている時。
………振り返ると、そこにいるのは………。
ルアがピクリと頭を上げた。
背後から物音が聞こえ、遅れて振り返ると……………………………………思わず、笑ってしまった。
「―――……………………………泣いているのか……?」
………そう。
…やはり、振り返ると…。
……………そこにいるのは、彼だった。