亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
真っ白な城の明かりに照らされた綺麗な顔。

その大きな瞳に、涙が浮かんでいた。

何故ローアンは泣いているのか。
不安になり、そのまま無言で室内に入った。

歩み寄ると………彼女は何故か、今度は微笑を浮かべた。

「………不思議な人だな、キーツは。…………何でもない。気にしないで………」

「………」

彼女はそう言って、窓の外に向き直った。明かりも点けず、ただじっと城を眺めている彼女の隣りに並び、同じ様に城を眺めた。



………以前より、城の輝きが薄れている。


………封印が解かれた時、あの輝きは無くなるのだろうか。










………。


















「…………用があるから尋ねて来たのだろう?………ここで構わない。………話してくれ」

沈黙を破り、ローアンは城から視線を移さないまま言った。
…少し遅れて、キーツの小さな溜め息が聞こえた。


「……………作戦での、君の動きについて………話がある」

「……………ルア、今夜は別の場所で寝なさい。………口論でうるさい部屋では寝られないだろう?」

そう言ってルアを部屋の外に出る様促した。ルアは欠伸をしながらのそのそと出て行った。



………二人だけになり、ローアンは腕を組んで改めてキーツに向き直った。

………約30センチ以上も背丈の高い彼を見上げるのは、少し疲れる。
キーツも見下ろす様な形で、真剣な面持ちでローアンを見詰めた。

「………それで?……………私はどうすればいい?」

ローアンは首を傾げて言った。

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