亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………私の邪魔をするな。そんなに遊んで欲しいのならば………………私の代役をくれてやる」


空高く上昇したオルカの背で、クライブはゆっくりと手を伸ばした。

地上に向かって。


笑みが零れる口で。





声の無い、吐息だけの呪文を………唱えた。

















「―――…『σπασμενοζ αντραζ、αντοζ γελασε ειρμνικα(壊れた男、彼は冷ややかに笑った)』………!………起きろ、イヨルゴス…」
















二重、三重の巨大な魔方陣が、大地に浮かび上がった。



黒光りする足元の陣は、ゆっくりと回転する。

キーツは巨大な魔方陣から抜け出した。


………激しい地鳴り。火花を散らした黒い竜巻が発生し、魔方陣を覆い尽くしていく。



………濁った風の中に、ぼんやりと青く光る巨大な丸い灯火が二つ………。


茫然と見上げていたキーツに………竜巻の横から、何かが目にも止まらぬ速さで伸びて来た。

それはあまりにも大きく、とても受け止め切れるものではないと瞬時に判断し、後ろに大きく飛退いた。

伸びて来たそれは今までキーツがいた場所の地面を、深く抉り取った。


「………」

砂煙が舞い上がる中、キーツはその姿を見た。



………竜巻から伸びる土で汚れたそれは………………青白い体毛に覆われた、巨大な獣の足だった。

獣足と言うよりも、牛の様な蹄の足。
鋼鉄の様な硬く、太い蹄。

足首にくくり付けられた大きな鎖が、少し動く度にジャラジャラと鳴る。





………竜巻は、治まった。魔方陣もいつの間にか消えた。


そして荒野の中央に残されたのは………。






…………怪物だった。
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