亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





優に、20メートルは越えている。



上半身は人間に似ていて、牛の様な下半身を持つ。

古代の書物でみたことのある、戦士が被っていた古びた銀の兜を付け、鬱血した様な黒い手には刃こぼれした斧と銀の盾が握られている。

兜から覗く骨張った顔は、大きな青い眼球が二つ。鼻は削り取った様に欠損しており、裂けた口は端の方から細い糸で縫われていた。
垂れた耳には鎖と宝石があしらわれた耳飾り。
首には囚人の様に何重にも重りの付いた鎖ががんじがらめで巻かれ、棘が刺さった背中は黒い背骨が透けて見える。

胴体部分が、横一文字にうっすらと割れ、グロテスクな裂けた口が現れた。












その頭上を漂うオルカ。

クライブはこの怪物を見下ろし、笑みを浮かべた。



「………碧き異型の戦士イヨルゴスよ……………貴様の主人の末裔、ユリアクロウの名において命じる。……………………………………私は契約を破棄する。…イヨルゴス、貴様はもう自由だ。……………この世で命を食らうなり、大地を破壊するなり……………勝手にしろ………」


クライブはそれだけ言って、上空から急降下し、風となってキーツの前を通り過ぎた。



何処へ行く……!



「クライブ……!!……………………っ…!」


不意に、城の光が差し込んでいた周囲が、暗くなった。


見上げるとそこには………大きな、斧。









振り下ろされた刃は、地を割った。











「―――…ぐあっ……!?」






凄まじい衝撃。

なんとか避けたが、土煙と共にそのまま吹き飛ばされた。



腰のもう一本の剣を抜き、二本の刀身を地面に突き刺した。勢いを軽減しながらなんとか着地する。
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