亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

―――ゾクリ。








全身が、震えた。





………低い、掠れた声。

威圧感のある………頭の中で消えずに木霊し続ける………。



「―――…!?」

咄嗟に、剣を振り返り様に振ろうとした。

が、後ろから伸びて来た色白の大きな手がローアンの口を塞ぎ、よろめく身体を拘束した。


手から剣が離れる。

地面に落ちた剣が、見る見る内に視界の中で小さくなっていく。



………違う…浮いて…!


よく見ると、大きな魚に似た化け物に乗せられ、物凄い速さで上空を移動している。

ローアンは羽交締めする大きな腕から逃れ様と抵抗した。

…が、耳元で嘲笑を含んだ声が囁かれた。



「…………暴れるな。………………落ちてしまうぞ……」



………白髪から覗く虚ろな目が、ローアンの顔を覗き込んだ。





実に楽しそうな、不気味な笑みを、クライブは浮かべていた。




それでも抵抗を続けるローアンをクライブは抱えたまま、オルカに合図をした。

二人を乗せたオルカは荒野に急降下し、地面を削りながら影の群れを薙ぎ倒して行く。


速度を緩める事無く、オルカは丘を滑る様に上がって行く。

………他の人間にはオルカの姿が見えていないのか、城門前を守る兵士達の目は襲いかかる影にしか向いていない。



何の妨げも無く、オルカは開け放たれた城門を越えた。






目の前に、あの城を囲む透明の壁が迫っていた。

ぶつかる………!






………しかし、一体どういうことだろうか。

何をしてもビクともしなかった強靱な壁は、スルリとローアン達を中に迎えた。


「―――!?」


「―――…姫君を待っていたのだよ…城自身がな」

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