亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――……お母様、お母様。
お母様はどうして、あまりお叱りにならないの?
お姉様が喧嘩をしていても、全然怒らないでしょう?
お母様ったら、お姉様の怒りが静まるのを待って、後からお話をして………まるで何事も無かったかの様に治めてしまうわ。
………喧嘩なんて、醜いだけなのに。お母様は喧嘩をお許しになるの?
―――…全部が全部許される訳ではないけれど……決して、悪いものではないのよ。
………感情のぶつかり合いは、醜いものでは無いわ、ローアン。
………感情の現れは、自己の存在感を確かめるものなのよ。皆、一人一人違うんだってことが分かるの。
……………ローアン、人の感情というものは………母は、宝石の様なものだと思っています。
――――………宝石?
―――…ええ、そう。………見る角度によって色彩を変える、汚れ無き宝石。
怒りや悲しみ、恨み…………醜いかもしれないけれど………どれも純粋な………綺麗な感情。
人は生まれながらに………宝石を持ってるの。
………そう考えたら、母は怒る気になれないの。
泣いて…笑って…怒って………。
…………その時その時の感情を………大切にしてほしいから。
………思い出の様に、胸に秘めていてほしいから。
―――……お母様。
―――…ねえ、お母様。
―――………独りの時…。
―――……どうしていつも。
泣いているの?