亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
フフッ、とアレクセイは笑みを漏らし、指示とは裏腹にキーツの隣りで剣を構えた。

「………ご冗談を。危機を前にしている主を放って行くことなど…出来る訳が無いでしょう。………ローアン様に殺されてしまいます。…ご心配召されるな、私の代わりに……」

「―――この野郎!!逃げんな糞がぁ!!」

………これまた聞き慣れた大きな声が、騒音をかき消して響き渡った。

同時に、キーツ達の頭上を“闇溶け”の影が通り過ぎて行った。
ちらりと見えた長身のその後ろ姿は、第1部隊隊長のベルトークだろう。


彼は真直ぐに城の方へと向かって行く。

それを追いかける様に、槍を振り回しながら返り血塗れのオーウェンが駆けて来た。

「―――…オーウェン!…無事だったのか!!」

キーツは嬉しそうに呼び掛けたが、当のオーウェンは苛々最骨頂で憤慨している。
クライブ同様、ベルトークも戦闘放棄したに違いない。

「………紳士面サディスト野郎め…!!………散々悪態吐いて敵前逃亡とは…い―い度胸じゃねぇか………!!」

「オーウェン様、一つだけお願いがあるのですが……」

「……っんだよ爺さん!!……俺は今最っ高に………!……おあああ!?」


キーツ目掛けて、再び斧が振り下ろされた。

砂埃と拳大の石が飛び交う。
キーツとアレクセイは飛退き、オーウェンは巻き添いになる形で砂をもろに被った。

濁った空気を思い切り吸い込み、咳き込む。

「………オーウェン様、城へ向かって下さい!私はキーツ様に付いておかねばなりません!!……ルアも一緒に行かせて下さい!」

「………はぁ!?……何言って…!」

第二派が、三人を襲った。凄まじい風圧がオーウェンとキーツ達を引き離した。

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