亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



………意識が朦朧とする。

瞼を閉じても、開いても、白黒の景色しか見えない。



―――…身体が……熱い。

…………震える…………動かない。


光りを失った、床の緑の紋章。

その中心に力無く倒れ伏すローアンの身体から、蒸気の様な煙が立ち上ぼっていた。


………頭上から、笑みを含んだ低い声が聞こえる。

「……………ハハハハハハ………………………とうとう……………………開いたな………………………………ご苦労だったな……姫君よ」


痛む身体。横たわるローアンの腹部に、固いブーツの爪先が飛ぶ。
蹴られた痛みに呻く声も出ない。成す術も無く床に伏すローアン。

「……………………………………碑石は………謁見の間だな…。……………………………ようやく………この城を消し去る日が………来た………」



………魔の者の血が流れるという理由で……貴族の位を取り上げ、屋敷を燃やし、家族を虐殺し………存在自体を消した狂王。
その男の墓である碑石。

そんな愚行を行った王族。

王族の権力を象徴づける…………汚れだらけの内面を隠した、偽りの白い……巨大な城。









国の象徴を無にする事。












この国を、無くす事。












この手で。























「…………………………………………………………長…かった……」



………深く、息を吐いた。












どれだけの恨みを胸に秘めれば、願いが叶うだろう。



どれだけの人間を殺せば、気が晴れるだろう。



どれだけの嘘を吐けば、あの城に近付けるだろう。










そればかり。

私の中は、そればかり。
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