亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
…………クライブは口を開けた扉へ、ゆっくりと歩み始めた。
………遠のいて行く足音。
ローアンは全身で息をしながらその音を聞いていた。
…………私を…殺さないの…?
終わりかと思っていた。しかし意に反して、彼はローアンに見向きもせず、中に入って行った。
「………………う………………っく………」
………少しずつだが……身体の自由が戻ってきた。
ガクガクと震える両手を床に突き、ぎこちない動作で立ち上がった。
羽織っていたマントの裾を踏んでしまい、前のめりに倒れる。
……マントをその辺に投げ捨て、再び立ち上がったローアンは、フラフラとしながら……………彼の後を、追った。
解けて乱れてしまった髪を背中に払いのけて、身体の痛みに耐えながら、前へ進む。
…………彼に……行かせてはならない。
…………この城を………消されては…ならない。
城の最奥にある、広大な空間、謁見の間。
酷く懐かしい城の中に、ローアンは足を踏み入れた。
息を切らしたオーウェンは、堂々と開いた城の扉の前で止まった。
後ろから付いて来たルアも同様に止まる。
「…………ばっちり開いてんな…………」
………ふと、足元にあるマントに目がいった。
………ローアンが羽織っていたものだ。
ついさっきまでここにいたに違いない。
………ということは、クライブもローアンも、ここに向かった筈のベルトークも…………城内にいるのか。
ルアがクンクンとローアンの臭いを嗅ぎ取り、城内に向かって吠えた。
「………行動派のお姫様は……後先考えないのか…?」