今夜、俺のトナリで眠りなよ
 自室に戻った優樹さんは10分もせずに、部屋から出てきた。

 夕飯を食べるのかと思いきや、上着を羽織って今にも出かけるような格好だ。

「優樹さん?」

 私はてっきり部屋着に着替えて、夕食にするものだと思っていたから、ご飯茶わん片手に優樹さんを見つめる。

「ああ、僕も少し出かけてくるよ」

 え? 今から、どこに?

 私は行き先を聞きたいのに、聞いちゃいけない気がして口を閉ざした。

 わかってる。きっと浮気相手のところ。

 今夜は一樹君がいないから。私が襲われる心配はないと思ったら、会いたくなったんだ。

 私より、浮気相手を愛しているんだ。優樹さんは、きっと……。

 私は、優樹さんに愛されてない。

< 29 / 135 >

この作品をシェア

pagetop