今夜、俺のトナリで眠りなよ
「会社に忘れ物?」

「まあ、そんなところ」

「そう。気を付けて」

 優樹さんは、私に笑顔も見せずにさっさと家を出て行った。

「今夜は一人、か」

 私は、お釜にご飯を戻すと独り言をぼやいた。

 ここ最近は、ずっと三人で夜を過ごしていたし。

 日中も一樹君が居たから、一人で時間を過ごすことが無かった。

 結婚して、一人で過ごす毎日だったから、すっかり一人の生活に慣れていたと思っていたのに。

 しん、と静まり返った家に一人でいるんだと思うと、すごく寂しくなる。

 慣れたいたはずなのに、すっかり忘れてる。

 一人で過ごしていたときは、どんなことしていたんだっけ?

















 夜九時。一樹君から、家に電話がかかってきた。

「どうしたの?」

『俺の予想だと、あんた一人だろうと思って』

「え?」
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