今夜、俺のトナリで眠りなよ
『兄貴、出かけんじゃねえの?』

「どうしてわかるの?」

『やっぱりなあ。俺が居ないからって……油断してやがるなあ』

 電話の向こうで、一樹君が失笑しているのがわかる。

『んじゃ、あと20分くらいで帰るよ』

「いいよ。お友達と飲んでるんしょ? ゆっくりしてきなよ」

『気にすんな。もう飲み会はほとんど終わってるから』

 じゃあな、と一樹君が電話を切った。

 まだ九時過ぎよ。飲み会が終わりのほうに近づいているなんて思えない。

 大学生くらいなら、これからが本番なんじゃなにの?

 一次会で飲み屋、二次会でカラオケ。それから一人暮らしをしている友達の家に乗り込んで、朝まで飲み明かす……くらいのことはするよね。

 私は父が厳しかったから、門限があって、それまでには帰らざるを得なかったけど。

 そうじゃない友達は、いつも朝まで飲み明かしてた。

 一樹君は男の子だし。女子メンバーの飲み会より、盛り上がるもんじゃないのかな?

 違うのかしら?

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