今夜、俺のトナリで眠りなよ
「女を手ゴマにして、いろいろとおイタしてそうな顔なのに、一人の女しか愛さねえって、変わったヤツだよな」

 船橋が、唐揚げにかぶりついた。

「しかも愛した女が、兄嫁じゃあ……救われねえよ」

 船橋が、ご愁傷様と付け加える。

「辛い恋になるってわかってる? 一生一緒になれないかもしれないんだよ」

 新庄が切ない表情になる。

「わかってる。守ってやりたいんだ。傍に居て、俺のできる限りの力で、あの人を守りたい」

「全く幸せそうな顔をしやがって」

 頑張れよ、と船橋がバシッと背中を叩いた。

「じゃあ、俺、帰るから」

 俺は飲み代をテーブルに置くと、店を出て行った。

 外は凍えるような寒さだ。コートの襟を立てると、俺は身震いをした。

 一生、一緒になれなくてもいいんだ。

 あの人が、俺を見なくても構わない。

 だけど、俺は守る。

 あの人を苦しめるモノたちから、あの人を守る。

 純真無垢なあの人を守れるなら、俺は何だってできる。

        一樹side 終わり
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