今夜、俺のトナリで眠りなよ
「今日は料理教室で、ロールケーキを作ったの」

 箱の中から、私が作ったフルーツ入りロールケーキを出した。

「少し形は崩れちゃったけど。味は美味しいはず」

 私が苦笑すると、ダイニングテーブルに座りながら一樹君がはみ出した生クリームを指ですくって口にした。

「んー、まあまあだな」

「失礼ね」

「美味いよ。何で、急に料理教室なんて通い始めてんだよ。そこそこの料理が作れてるんだから、別にいいじゃん」

 優樹さんの箸を持った一樹君が、パクパクと夕食を食べ始めた。

 私はご飯をよそると、一樹君の前に置いた。

「『そこそこ』じゃ駄目なんだよ。優樹さんが、帰ってきたいって思う家にするには、もっともっと努力しないと」

「無理だろ」

 あっさりと私の努力を否定しないで。

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