今夜、俺のトナリで眠りなよ
「あ、ごめん」

 一樹君も……の後に、私は一体どんな質問をしようとしたのだろう。

 一樹君も、好きな人には一途なの?

 そんなこと、私が聞いて良い質問?

 私は頭を横に振ると、頭の中に浮かんだ質問を追い出した。

「私の親はね」

「……てか、あんたの両親に興味ねえし」

「いいから。聞いてよ。私の親はね」

 私は一樹君が洗ってくれた食器を拭きながら、一方的に話出した。

 父は根っからの仕事人間で、それを母がずっと支えてきた。そんな詰まらない話を、一樹君が聞いてくれた。

 静かに、じっと私の気のすむまでキッチンで一樹君が聞いてくれた――。

< 49 / 135 >

この作品をシェア

pagetop