今夜、俺のトナリで眠りなよ
「そ……か。で、いつから寝起きを共にするって?」

「断っちゃったの」

「はあ?」

 一樹君が驚いた声をあげる。

「だよね。普通、驚くよね。断るなんて、おかしいよね」

 私は洗い物の手をまた止めると、「ふう」と息を吐いた。

 どうして断ってしまったんだろう。

「妻が夫の誘いを断るなんて」

「気持ちが乗ってないんなら、断っていいんじゃねえの? どうせ、兄貴は愛人とよろしくやってんだから、欲求不満ってわけじゃねえんだし」

「ん……。でも私は、妻なのに」

「『妻だから』って無理する必要なんてねえよ」

 私はスポンジをぎゅっと握りしめる。

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