今夜、俺のトナリで眠りなよ
「女が、そんな下品なゲップできるわけないでしょ」

 私が独り言を呟くと、クスクスと笑った。

『兄貴に愛されようと努力する道もいいかもしれねえけど。誰かを愛する道もあるってことだ』

 一樹君の言葉を思い出す。

 誰かを愛する、か。

 夫である優樹さんを愛するのが一番なはずなのに。

 どうしてだろう。脳裏に浮かぶのは、一樹君の笑顔ばかり。

 いつも傍にいて、優しくしてくれるのは一樹君で。でも一樹君は、夫の弟よ。

 もしかして、私は……。

 夫よりも、一樹君のほうに惹かれてる?

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