今夜、俺のトナリで眠りなよ
「どうしたら信じてくれる?」

「キス」

「無理」

 私は首を横に振った。

 私は優樹さんと結婚しているのよ?

「じゃあ、信じられない」

「子供みたいなこと言わないで」

 私は旅行鞄を手に持つと、一樹君の横を通って部屋を出て行こうとした。

 一樹君が私の手首を掴むと、ぐいっと引き寄せ、私の腰に手を回した。

「ちょ……んっ」

 一樹君は、私に抵抗する隙も与えずに、唇を重ねてきた。

 一樹君の温もりが、唇から伝わってくる。舌で、唇をこじあけられると、脳が解けるような甘いキスをした。

 がくっと膝の力が抜けて、私が床に座り込みそうになったのを一樹君が受け止めてくれて、長いキスに終わりをつげた。

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