今夜、俺のトナリで眠りなよ
「桜子さんを困らせるだけだってわかってるんだけど。でも、やっぱ無理。俺、キスしたい。もっともっと、桜子さんにキスしたい」

 チュっと私の額にキスを落とした一樹君が、私の部屋を出て行った。

 私は鞄を床に落とすと、その場に腰を落とす。

 キスされた唇に、そっと指をのせる。

 困らせるってわかってて、キスするんだから……、一樹君はずるい。

 本当はいけないことだってわかっているのに。

 どうしてだろう。全然、嫌じゃないの。

 私も、一樹君にキスして欲しいって思っちゃった。もっとキスして欲しかった。

 胸が苦しい。すごく苦しくて、息ができなくなりそう。

 これはイケないことなのに。

『嫌だ』って思わなくちゃいけないのに。全然、嫌じゃなかった。
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