ありのままの、あなたが欲しい。
亜優は酷く傷付いたような、寒さで震える子猫のような瞳で俺を見つめる。



──どうしてそんな目をするんだ?

俺達の関係はいつかこういう日が来るってわかっていただろう?


亜優もそのつもりで、気晴らしで俺と寝ていただけなんじゃなかったのか?



沈黙が薄暗い廊下の隅に立ち込める中、目を伏せた亜優がゆっくりと口を開いた。



「あの人の…藤咲さんのところに行くの…?」



そうか…、武田さんとの会話を聞いていれば亜優だって夏芽さんの名前は知ってるよな。


──だから。



「……あぁ、そうだよ」


「好きなの?彼女のことが」



俺の恋心を知っていても、不思議じゃない。


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