ありのままの、あなたが欲しい。
俺はまっすぐ亜優を見据えて息を吸い込んだ。



「……好きだよ」


「………」


「もう自分じゃどうしようもないくらいに」



夏芽さんのことになると自分が弱くて、情けなくなったように感じる。

でもきっと、これが恋ってやつなんだ。



「……あの叶がね……」



唇を噛み締めて俯いた亜優は、消え入りそうな声でぽつりと呟く。

そして顔を上げた時には、何の感情も表さない人形のような表情をしていた。



「ねぇ…藤咲さんから何も聞いてないの?」


「…何のこと?」


「あたし、この間偶然藤咲さんに会って話したんだけどね、彼女知らないみたいだったから教えてあげたの。

──叶の母親のこと」



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