魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
その後姫君たちを迎え、城で1番大きな客間に集まると、場は妙な緊張感に包まれた。

ティアラは元々人見知りで、魔王がラスに隠れて姫君たちと秘密の情事を交わしたことを知っていたし、

リロイも潔白がモットーで、ティアラと同じく魔王の悪事を知っていた。

ローズマリーとオーディンは基本的に傍観者の立場を好むので、分け入って話を聴きたがることはしなかったが、姫君たちの表情を見て、すぐに理由を見つけた。


そしてコハクの膝の上のラスと、でれでれしているコハクを一心に見つめている姫君たち――

完全に三角…いや、多角関係の状態だったが、1人緊張感を抱いてないのは、魔王だ。


「コハク様…私たちは街を綺麗にして、見学に来る人々を歓迎すればいいのですね?」


「ああそうだ。壊れた家具とかは魔物たちに処分させるから、お前たちは家主が不在になった家を新築のように綺麗にしろ。移民たちが喜んで済むような家にしてほしいんだ」


「喜んで…!お任せ下さい、コハク様」


「で、俺とチビは今日は城の解凍。俺はチビが居ねえとやる気出ねえからさ。な、チビ」


「私もお掃除するっ。力を合わせて頑張ろうねっ」


――ラスが笑いかけるとスノウたちも笑い返してくれたが…ラスは妙なコンプレックスを感じていた。

スノウたちはとても綺麗で…コハクに見てもらおうと化粧をし、着飾っている。

だがラスはほとんど化粧はしないし、髪も今までお手入れをしたことがない。


姫君たちを見ているとやたらそれが気になり、コハクの膝の上でそわそわしていると、ティアラが腰を上げ、ラスの手を引いた。


「ティアラ?」


「綺麗にしてあげる。私の部屋へ行きましょ」


「じゃあ俺も…」


「お前は姫君たちのバトラーなのだからここに居て。さあラス」


顔色を読んでくれたティアラにすがる想いで膝から降りると、コハクが不服そうな顔をしたが手を離してくれたので、そのままティアラと2人で消えて行った。


そしてうっとりしている姫君たちを見たコハクは――


「悪ぃけど色っぽい話は一切無しだ。チビがやきもち妬くからさ」


うきうきしながらラスの帰りを待った。
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