魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ドアを開けると、同じように不安そうな表情のコハクが立っていた。

…自分からスノウたちを呼んだくせに。


そんな思いが顔に出てしまったのか、ラスを抱っこしたコハクはラスの唇にちゅっとキスをすると、胸に顔を押し付けた。


「わかってるって。チビを不安にさせようなんて思ってねえし、あいつらには人集めに来てもらっただけだ。チビが考えてるようなことには絶対なんねえから」


「私が考えてるようなことって…なあに?」


「俺を疑ってるんだろ?仕方ねえよな、悪さしたのは確かだし、でももう絶対しねえから。ほんとだから」


「…うん、わかった。わかってるから…離してっ」


「やだねー」


じたばたともがくラスにお構いなしの魔王は、お化粧をしてさらに綺麗になったラスにまたでれでれと鼻の下を伸ばし、腕を組んで呆れ顔のティアラにウインクしてみせた。


「気持ち悪いわ、やめて」


「ああ?てめえイタズラするぞ」


「コー、喧嘩は駄目」


ラスに叱られて肩を竦めたコハクはスノウたちの居る客間に戻り、瞳を輝かせてコハクの帰りを待ちわびていた姫君たちの様子に鼻を鳴らし、壁に寄りかかり、腕を組んで彼女たちを監視していたリロイに声をかけた。


「庭にワン公とドラが居るから、ボインと一緒に好きな方に乗ってけ。ビラも乗せといたからな」


「…スノウ姫たちはどうするんだ?」


「王国中を掃除だ。だから俺とチビとは別行動!なんだよ文句あんのかよ」


「…別に」


――2年前のリロイは子供くさかったが、2年を経て美青年に…そして凛々しくなり、魔王にぞっこんの3人でさえも時々リロイを盗み見てはティアラをいらいらさせ、リロイの腕を取ると出入り口へと引っ張った。


「早く行きましょう。早くっ」


「じゃあラス…色々と気を付けて」


「うん、リロイも気を付けてね。行ってらっしゃいっ」


新妻のようにラスから送り出されたリロイがはにかむと、コハクはぽうっとなってしまったラスの顔をまた胸に押し付け、視界を遮った。


「オーディン、お前も早く行けよ。ローズマリー、薬は持ってるな?」


ローズマリーはラスが心配しないように微笑み、部屋を後にした。
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