魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ドラちゃんとケルベロスを貸し出したのでどうやってクリスタルパレスへ行くのかと思っていたら、庭に出てぱちんと指を鳴らしたコハクの前に例の馬車が出現した。

ラスにとってはとても懐かしく、馬車を引く2頭の白馬の頭を撫でてやるとコハクの首に抱き着いた。


「コー、懐かしいね!旅…楽しかったもんね」


「そだな、チビにとってははじめての旅だったもんな。落ち着いたらまた旅でもすっか?」


「ほんとっ?うん、っしたいしたい!」


「俺もチビとしてえなあ」


また色ぼけ発言をしてしまいそうになって振り返ると、3人の姫君たちは複雑そうな表情でこちらを見ていた。

特に気の強いスノウはとても納得している感じではなく、コハクは顎で馬車に乗り込むように命令した。


「早く乗れ。チビは俺の膝の上な」


「…うん」


――コハクが特別扱いをしてくれるのは嬉しいが、2年前仲良くしてくれたスノウたちから上目遣いで見られるのは…正直胸が痛い。

スノウたちは3人並んで座り、コハクは真向かいに座るとラスを抱っこしたまま何食わぬ顔をして頬や腰をべたべた触っている。

引っ込み思案のレイラとエリノアはこの2年間どうやって過ごしていたかをコハクに話したかったのだがとてもそんな雰囲気ではなくて黙り込んでいると、スノウが先陣を切った。


「コハク様…私…王子と7人の小人とは別れました。今私は1人で住んでいるんです。それで…」


「へえ、女1人で暮らすのは大変だろ、早くいい男捕まえて楽しろよ」


「わ、私は…あの塔で1人でまだ住んでいます。でもここが住みやすかったらここに…」


「そだな、ここは俺が統治するつもりねえし、グリーンリバーは今定員オーバーだからいいんじゃね?」


「私は…コハク様にかけられた魔法が解けました。その時妖精が迎えに来て…」


「ふうん、玉の輿なんだし王子もイケメンだったろ?もったいねえことしたな、また捜しに来るかもしんねえぜ」


…3人の主張を悉く退け、ラスをお触りするのに夢中な魔王は一切視線を上げなかった。


2年前のコハクと違う。

3人はそう感じていたが、影から完全体に戻ったコハクは…さらに魅力的になっていた。
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