魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
王たちの墓は、王国の裏手側にある山の頂上に作られた。

魔物たちが驚くべきスピードで煉瓦造りの立派な墳墓を作り、火葬した後いくつもの壺に収められ、ラスとコハクが中へ入って安置した。


「水晶に手を出さなきゃ長生きできたのかな」


「イエローストーンだけで十分だったんだ。今となっちゃ欠けちまったけど…これも中に一緒に入れとくか」


「!駄目、コーが持ってて!」


凍った王国からイエローストーンを発見し、体内に入れていたおかげで…コハクは助かった。

後にコハクが語ってくれたのだ。


“刺された時、胸から何かが割れるような音がした”と。


イエローストーンとホワイトストーンがコハクの命を救ったのだ。

コハクがその聖石を王たちのせめてもの慰みに、と考えてくれたことがとても嬉しかったが、ラスにとっては恩人とも言える大切なもの。

胸に手を入れて半分に欠けたあたたかな輝きを放つイエローストーンを取り出したコハクからそれを奪い取り、また胸に押しつけて懇願した。


「お願い、コーが持ってて」


「そっか?チビがそこまで言うなら、まあそうしとくか」


細かい細工が施されているウォード錠に封印の魔法をかけて鍵をすると、早速ラスを抱っこしようとして、ショルダーバッグがごそごそと動いたので手が止まった。


「な、んだ…?」


「あっ、忘れてた、フーちゃん出ておいで」


「ぴぎっ」


ぴょんと飛び出て来たのは改造をして悪の芽を摘んだフローズンで、ラスの足元を素早く走り抜けると森を駆け下りてしまった。


「待って、迷子になるから駄目だよ!」


「おいこらチビ!お前が迷子になるからやめろって!」


綺麗に舗装された山道を駆け下りて城下町へ入ると、広場の前でしゃがみこんだラスがフローズンの頭を撫でてやっていたので笑みを浮かべながら近付こうとした時――


「コハク様」


「なんだよスノウ、俺は今忙しいんだから話しかけんなよな」


ひそりと声をかけてきたのはエプロン姿のスノウだ。

最も気性が激しく、3人の中で最も知略に富み、男を陥れる魔性の女――


「お話があるんです。今夜私の部屋へ」


…動き出した。
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