魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクが形の良い唇の口角だけを上げてにやりと笑った。
駆け引きを得意とするスノウでさえもその笑みにくらっとしてしまい、なんとか平静を保ちながらラスには見えない角度でコハクの腕に触れた。
「なんで俺がお前の部屋に行かなきゃなんねえんだよ」
「そうしてくれないと協力をしない、といったら?」
「ちっ、ふざけんなよ。お前が居なくなったって大して変わわんねえし」
「わかりました。じゃあ帰らせて頂くわ」
腹の探り合いをした挙句、真っ赤な唇を吊り上げて微笑んだスノウが競り勝ち、コハクはスノウの腕を振り払うとフローズンと遊んでいるラスを見つめた。
「俺はチビを裏切らねえ。もう絶対お前を抱いたりしねえぞ」
「それでもいいんです。コハク様、約束しましたからね。今夜いらして下さい、お待ちしています」
返事もせず、スノウの顔も見ずにじっとラスを見つめるその眼差しは…2年前よりも遥かに愛のこもったものだった。
2年前、ラスの誕生日の夜にコハクを誘い込んで一夜…いや、数時間の情事を楽しんだ時は罪悪感の欠片も感じてはいないようだったが…
今はラスの信頼を欠きたくないという思いが強く感じられる。
――スノウは唇を噛み締めながらその場を後にし、ラスは両手で抱えれるほどの大きさのフローズンを抱っこすると笑顔でコハクに駆け寄った。
「コー、見て!フーちゃんがごろごろ言ってるの。可愛いっ」
「俺もごろごろ言うし!ほら!ほら!」
「コーのはごろごろじゃなくってぐるぐる言ってる」
コハクの喉を触って笑ったラスにいつもの天真爛漫さが戻り、内心ほっとしたコハクはラスを抱っこして中央広場に大きく走る亀裂の底を覗き込んだ。
「修復にゃ時間かかるけど、絶対半年でやっちまうからな。早くウェディングドレス着てるチビを見たいなー」
「うんっ、頑張ろうねコー」
頭を撫でてくれたラスに有頂天まっしぐらな魔王は、今夜のことを考えるとこそりとため息を漏らし、ラスの頬にキスをした。
「ねえコー、スノウたちのところに行こうよ。お掃除くらいなら私にもできるから」
「グラースも居るだろうし、じゃあ合流すっかー」
そして再び――
駆け引きを得意とするスノウでさえもその笑みにくらっとしてしまい、なんとか平静を保ちながらラスには見えない角度でコハクの腕に触れた。
「なんで俺がお前の部屋に行かなきゃなんねえんだよ」
「そうしてくれないと協力をしない、といったら?」
「ちっ、ふざけんなよ。お前が居なくなったって大して変わわんねえし」
「わかりました。じゃあ帰らせて頂くわ」
腹の探り合いをした挙句、真っ赤な唇を吊り上げて微笑んだスノウが競り勝ち、コハクはスノウの腕を振り払うとフローズンと遊んでいるラスを見つめた。
「俺はチビを裏切らねえ。もう絶対お前を抱いたりしねえぞ」
「それでもいいんです。コハク様、約束しましたからね。今夜いらして下さい、お待ちしています」
返事もせず、スノウの顔も見ずにじっとラスを見つめるその眼差しは…2年前よりも遥かに愛のこもったものだった。
2年前、ラスの誕生日の夜にコハクを誘い込んで一夜…いや、数時間の情事を楽しんだ時は罪悪感の欠片も感じてはいないようだったが…
今はラスの信頼を欠きたくないという思いが強く感じられる。
――スノウは唇を噛み締めながらその場を後にし、ラスは両手で抱えれるほどの大きさのフローズンを抱っこすると笑顔でコハクに駆け寄った。
「コー、見て!フーちゃんがごろごろ言ってるの。可愛いっ」
「俺もごろごろ言うし!ほら!ほら!」
「コーのはごろごろじゃなくってぐるぐる言ってる」
コハクの喉を触って笑ったラスにいつもの天真爛漫さが戻り、内心ほっとしたコハクはラスを抱っこして中央広場に大きく走る亀裂の底を覗き込んだ。
「修復にゃ時間かかるけど、絶対半年でやっちまうからな。早くウェディングドレス着てるチビを見たいなー」
「うんっ、頑張ろうねコー」
頭を撫でてくれたラスに有頂天まっしぐらな魔王は、今夜のことを考えるとこそりとため息を漏らし、ラスの頬にキスをした。
「ねえコー、スノウたちのところに行こうよ。お掃除くらいなら私にもできるから」
「グラースも居るだろうし、じゃあ合流すっかー」
そして再び――