魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
あちこちに沸いているフローズンを退治していたグラースが小さな笑みを浮かべて近付いてくると、ショルダーバッグの隙間からひょこっと顔だけ出しているフローズンの額にでこぴんをした。


「それは退治しなくていいんだろうな?」


「うん、フーちゃんは大丈夫。ねえグラース、ちょっと休憩して一緒にお掃除しよ。ねっ、あそこのお花畑が綺麗だったの!」


「ああ、一緒に食べよう」


「俺はチビと2人で食べたかったんだけど、お前ならいいや。実は色々作っておいたんだー」


含み笑いを浮かべ、城の広大な庭園で咲き乱れる花畑に着くと、もう完全に乾き切った花々の上にちょこんとラスが座り、コハクがラスの影からバスケットを取り出した。


「いつの間に私の影に入れてたのっ?」


「チビが寝てる時ー。ハムとかチーズとか色々挟んだサンドウィッチにー、紅茶にー、オレンジ!さ、食おうぜ」


とても3人では食べきれない量だったので、スノウたちとまだほとんど話していないラスはすくっと立ち上がり、グラースの手を引いた。


「スノウたちを呼んでくる!コーはここに居てねっ」


「えー!?グラースが残って俺とチビが…」


「グラースに話したいこともあるからここに居てねっ、絶対だよ!」


念を押されてふてくされたコハクが花畑の上に寝転がるのを確認し、姉のように慕っているグラースを見上げて無邪気に笑いかけた。


「疲れたでしょ?女の子なのにこんなことさせてごめんね」


「私は女だったか?今の今まで忘れていたな」


くすくす笑い合い、まだあちこち滑る大地を踏みしめながら、グラースに話したいことを口にした。


「スノウたちは…まだコーのこと好きだと思う?」


「…そう思うが、それがなんだ?しなくてもいい心配をするのはよした方がいい」


「でもコーは前に沢山遊んでたから…」


「今もそうだと思うか?あいつは軽い男だがお前に対しては真摯でいると思う。ラス、夫婦は信頼関係が大切なんだぞ。今からそんな心配をしていると心がやられてしまう」


「うん…。グラース、ありがと。もやもやがちょっとだけなくなったかも」


「ちょっとだけか?」


そして――
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