魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
腹部を激痛が襲い、身体を折ったラスの肩を支えたデスは、ラスをソファに寝かせて機敏な動作で立ち上がると、背を向けて部屋から出て行こうとした。
ものすごく心細くなっているラスは声を上げて引き留めようとしたのだが…激痛のために声を出すこともできない。
伸ばした手が宙を掴んだ時、デスが一瞬だけ肩越しに振り返ると、安心させるようにこくんと頷いた。
「……魔王…呼んで来る…」
「で、す……早く、帰って来てね……!ベビー…もう、生まれちゃうの…?」
「………うん。でも……大丈夫……」
“大丈夫なはず”と心の中で付け加えたデスは、身を翻して今度こそ部屋を出てコハクを呼びに行った。
そうしながら城中を掃除しているエプロン姿の魔物たちに声をかけてラスの出産が始まったことを知らせると、彼らは慌ただしく動き始めてグラースにも声をかけに行った。
その頃コハクはグリーンリバーの雑務に追われていたのだが、廊下を騒々しい足取りで歩いている足音がしたので書類に落としていた目を上げて待っていると――入ってきたのはコハクの予想を裏切った人物だった。
「デス?珍しいこともあるもんだな、お前が足音立てて歩くなんて」
「………ラス……お産が…始まった…」
「へっ?……いや、だって…まだ早いだろ!?…お前そんなこと言わなかったじゃねえか!」
「……まだ…早い……。でも…ちゃんと……生まれて来るから…」
どこか不安げな表情と共にぽつりと呟いたデスの肩を抱いたコハクは、一緒に書斎を出て最早走っている速さで自室に向かい、そこで息も絶え絶えなラスを見て胸を詰まらせた。
「チビ…大丈夫か?…痛いんだろ?俺がその痛み代わってやれたらいいのに…!」
「コー…コー…もう、生まれてきちゃうみたい…っ。早く出て来たい、って言ってるんだよ、きっと…」
顔には脂汗が浮いていて、苦しげな表情で短い息を吐いているラスを抱き上げたコハクは、ベッドにラスを横たわらせると、膝を折ってラスの手を両手で包み込むと、唇を噛み締めてラスを見つめた。
「傍に居てやることしかできねえけど…ごめんな、すぐに小僧たちやカイに使いをやるから。あいつらもすぐここに来るから」
一瞬だけラスの傍を離れてバルコニーに出たコハクは、ドラちゃんとケルベロスを召喚してゴールドストーン王国とクリスタルパレス王国に飛ばせた。
…不安だけがどんどん膨らんでいく。
まだ生まれて来るには、早いのに。
ものすごく心細くなっているラスは声を上げて引き留めようとしたのだが…激痛のために声を出すこともできない。
伸ばした手が宙を掴んだ時、デスが一瞬だけ肩越しに振り返ると、安心させるようにこくんと頷いた。
「……魔王…呼んで来る…」
「で、す……早く、帰って来てね……!ベビー…もう、生まれちゃうの…?」
「………うん。でも……大丈夫……」
“大丈夫なはず”と心の中で付け加えたデスは、身を翻して今度こそ部屋を出てコハクを呼びに行った。
そうしながら城中を掃除しているエプロン姿の魔物たちに声をかけてラスの出産が始まったことを知らせると、彼らは慌ただしく動き始めてグラースにも声をかけに行った。
その頃コハクはグリーンリバーの雑務に追われていたのだが、廊下を騒々しい足取りで歩いている足音がしたので書類に落としていた目を上げて待っていると――入ってきたのはコハクの予想を裏切った人物だった。
「デス?珍しいこともあるもんだな、お前が足音立てて歩くなんて」
「………ラス……お産が…始まった…」
「へっ?……いや、だって…まだ早いだろ!?…お前そんなこと言わなかったじゃねえか!」
「……まだ…早い……。でも…ちゃんと……生まれて来るから…」
どこか不安げな表情と共にぽつりと呟いたデスの肩を抱いたコハクは、一緒に書斎を出て最早走っている速さで自室に向かい、そこで息も絶え絶えなラスを見て胸を詰まらせた。
「チビ…大丈夫か?…痛いんだろ?俺がその痛み代わってやれたらいいのに…!」
「コー…コー…もう、生まれてきちゃうみたい…っ。早く出て来たい、って言ってるんだよ、きっと…」
顔には脂汗が浮いていて、苦しげな表情で短い息を吐いているラスを抱き上げたコハクは、ベッドにラスを横たわらせると、膝を折ってラスの手を両手で包み込むと、唇を噛み締めてラスを見つめた。
「傍に居てやることしかできねえけど…ごめんな、すぐに小僧たちやカイに使いをやるから。あいつらもすぐここに来るから」
一瞬だけラスの傍を離れてバルコニーに出たコハクは、ドラちゃんとケルベロスを召喚してゴールドストーン王国とクリスタルパレス王国に飛ばせた。
…不安だけがどんどん膨らんでいく。
まだ生まれて来るには、早いのに。