約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く

「加賀、いつもすまない。

 山波が居なくなって、君が屋敷内のことをしてくれて
 助かっている」



瑠花の部屋に向かう途中、
私に声をかけてくれたのは斎藤一。



彼とはそんな仲が良いわけではないのに、
何故か……いつも気にかけてくれる不思議な人。


この屯所の中で、やっぱり気にかけてくれる人が
どんな形ででも嬉しくて……。



「私が出来ることなんて殆どないです。
 でも今は私もここに居させて貰ってるから。

 それに私、芹沢さんたちを殺した人が知りたい。

 噂では長州の人だって広がってます。
 
 だけど……私が知ってる長州の人たちは
 そういうこと出来る人じゃないと思うんです」



そう……。


今、私がこの場所でやりたいことは、
もう一つの私の大切な人たち。


晋兄や、義助たち長州の人たちに
課せられた汚名を私がちゃんと取り除いてあげたい。


後は瑠花とゆっくり話がしたいんだ。


私は歴史が大嫌いで苦手。

TVで、新選組をしててもチャンネル変えてた。


退屈だから……。



だけど……今は歴史が知りたい。



これから……この世界はどうなっていくの?


大切な義助たちを、
守っていくにはどうしたらいいの?



花桜が居なくなった今、私は瑠花を一人置いて、
何処かに行くなんて出来ない。



本当なら、
この屯所に居たくない気持ちもあるの。



ここは敵の場所。


晋兄たち……長州の悪口を言う人が
多い場所だもの。



「加賀。

この場所では長州のことは話さない方がいい。
 口は災いの元と言う」


諭すように紡がれた言葉に、
思わず自分自身の唇を噛みしめる。


「失礼します。
 瑠花の様子を見に行きたいので」


斎藤さんの隣を通り抜けようとした時、
すれ違いざま、彼の手が私の腕を掴んだ。


振りほどこうとしても、振りほどける気配すらない
この状況。



「斎藤さん。
 放してください」



声を荒げると、今度は素直に手首をはなした。


遮るものがなくなった私は、その場所から立ち去るように、
瑠花の部屋へとかけて行った。



「瑠花っ!!」



慌てて肩を弾ませながら瑠花の部屋に駆け込むと、
そこには……意外な顔ぶれ。



あの雨の日以来、何があったのは……
瑠花の部屋に、沖田総司が顔を見せることが多くなった。


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