約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



鬼の道に踏み込むことも必要。





静かに諭すように告げられた
沖田さんの覚悟が耳から離れない。







誰だって最初がある。



その最初を、どれだけ早く未来に引きづらないように
断ち切って、自分の道を歩いて行くか……。


そう言うことなんだよね。






あの日……私が剣を振るわなければ、
私自身が殺されていた。



それだけの場所に居たんだ……。





瑠花の想いに答えたい一身で乗り込んだ私。

だけど私はその戦いの真実が何一つ見えてなかった。



私はあの場所に流されて辿りついただけ。
自分の足で、立つべくして辿りついてない。



だからこそ……自ら犯した罪が、
こんなにも強く圧し掛かる。




自分の足で……立ち上がる。
その意味に辿りつければ……。





何時の間にか、沖田さんもまた私の前から姿を消して
何処かへ行ってしまったみたいだった。


じっとりと汗ばむ肌を手拭いで軽く抑えて、
もう少し足を伸ばそうとした時
勝手口のドアがゆっくりと開いた。




「あっ……」



ゆっくりと扉を潜って姿を見せたのは山南さん。



「山波君……」



あんなにも衰弱していた山南さんは、
今は何事もなかったかのように、
たおやかな笑みを浮かべて、私の名前を呼ぶ。



「お体は?」

「心配をかけたね。

 腕の方は完治することは叶わなかったが、
 この通り、一人で出歩くことは出来るようになった」


腕の方は完治しなかった。


剣を持つ人にとって、その言葉の重みに
私は何を発すればいいのかわからぬまま
ただ黙って、山南さんの言葉を聞いてた。



「山波君、池田屋事件のこと聞いたよ。
 少し付き合ってくれないか?」



そう言われて、ゆっくりと頷くと
山南さんは私の前をゆっくりと歩き出した。




久し振りに出歩く京の町。




山南さんに連れられて向かった先は島原。


その花街の一角にある建物に、
山南さんは、さっさと入ってしまう。



立ち入ることに尻込みしている私に、
山南さんは「山波君」っと再度、
名を紡いで中に入るように促した。


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