愛を教えて
全く気持ちがこもっていない、まさしく口先だけの謝罪に、尚子の怒りは収まらない。
しかも、その怒りを万里子に向けようとする。


「快く承諾してくださって嬉しいわ、万里子さん。善は急げと言いますもの、早いほうがよろしいわね。明日にでも……」

「その必要はありません」


尚子の言葉を遮り、卓巳は言い返した。


「検査が必要なら私が受けます。万里子が証明すべきことではありません」


卓巳に承諾させることができ、尚子の顔は輝いた。

だが、その笑顔が長く続くことはなかった。


「その必要こそありませんよ。検査結果が記載された報告書なら、わたくしが持っております」


そう言って皐月が千代子に命じ、持って来させたのは、沖倉弁護士を通じて手に入れた報告書だった。


「今月初めに、大阪の大学病院で検査を受けたのですね。結婚に際して、あなた自身も不安だったのでしょう。沖倉先生にお願いして報告書をいただいて参りました。藤原家の後継者問題にも関わることですから……事後承諾になって、許してちょうだい」


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