愛を教えて
(なぜだ!? なぜ、万里子はあんな男を呼んだんだ! 妻がいながら自分を孕ませ、その挙げ句、無責任にも堕ろさせた男を)


「万里子!」


卓巳の呼びかけに、万里子は振り返った。
彼女は驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔を作り、なんと、卓巳に俊介を紹介し始める。


「卓巳さん。この間話した、香田俊介さんです。忍の息子さんよ」

「はじめまして、香田です。このたびはご結婚おめでとうございます」


差し出された手を、卓巳は冷ややかに無視する。


「ああ。君のことは妻から聞いている。昔、随分と世話になったらしいな」

「え? いえ、そんな、千早社長には僕のほうが大変お世話になりました。マリちゃん……いえ、万里子様には勉強を少し教えたくらいでしょうか。あとは、遊び相手をしただけで」


俊介の言葉は、嫉妬の炎に大量の油を注ぎ込む。卓巳は憤りに表情を繕うことすら忘れた。


「今後、そんな遊び相手は無用だ。それに、妻の名を親しげに呼ばれるのは不愉快極まりない!」


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