愛を教えて
しかし、あのときの万里子は卓巳しか見ておらず……。
朝美の言葉に潜んだ悪意など、すぐに記憶の底に消えていった。
「まあ、覚えていてくださったんですの? それは光栄ですわ。……では、失礼いたします」
万里子の記憶力などあてにしていなかった、とでも言わんばかりに、朝美は『光栄』と言いながら鼻で笑った。
そのまま、階段を上がり、ツカツカと廊下を横切って卓巳の書斎に入り込む。そして、デスクの奥にある戸棚の辺りを触り始めた。
「困ります。勝手に部屋に入られては」
万里子は驚いて朝美の後を追う。
「あら。でしたら、お願いいたします。本日の会議に使う書類をお忘れになったとか。薄い緑の封筒に入れて、いつもの場所に保管されているそうです。出していただけますか?」
実を言えば、万里子が卓巳の書斎に入るのは初めてのこと。
邸内とはいえ卓巳の聖域に踏み込むようで、遠慮していた。
だが、我が物顔で闊歩する朝美を見過ごすこともできない。
万里子はとりあえず、デスクを中心に探してみる。
しばらく時間をかけ、ようやく薄い緑の封筒を見つけたかと思ったら、なんと数十枚が束になっていた。
しかも、中身はすべて似たような書類だ。
朝美の言葉に潜んだ悪意など、すぐに記憶の底に消えていった。
「まあ、覚えていてくださったんですの? それは光栄ですわ。……では、失礼いたします」
万里子の記憶力などあてにしていなかった、とでも言わんばかりに、朝美は『光栄』と言いながら鼻で笑った。
そのまま、階段を上がり、ツカツカと廊下を横切って卓巳の書斎に入り込む。そして、デスクの奥にある戸棚の辺りを触り始めた。
「困ります。勝手に部屋に入られては」
万里子は驚いて朝美の後を追う。
「あら。でしたら、お願いいたします。本日の会議に使う書類をお忘れになったとか。薄い緑の封筒に入れて、いつもの場所に保管されているそうです。出していただけますか?」
実を言えば、万里子が卓巳の書斎に入るのは初めてのこと。
邸内とはいえ卓巳の聖域に踏み込むようで、遠慮していた。
だが、我が物顔で闊歩する朝美を見過ごすこともできない。
万里子はとりあえず、デスクを中心に探してみる。
しばらく時間をかけ、ようやく薄い緑の封筒を見つけたかと思ったら、なんと数十枚が束になっていた。
しかも、中身はすべて似たような書類だ。