愛を教えて
「卓巳さん!」


万里子の右手に巻かれた包帯に、卓巳は唇を寄せて呟いた。


「太一郎に限らず、君を傷つける奴が現れたら、僕は許さない」

「それは無理です」

「どういう意味だ? 僕じゃ君を守れないと言うのか? そりゃ、今回も君に怪我をさせてしまった。本当に申し訳ないと思っている。でも」


万里子は自分の右手に添えられた卓巳に手に、左手を重ねる。


「違います。だって、私を傷つけることができるのは……卓巳さん、あなただけですもの。太一郎さんに叩かれても、それは一瞬の痛み。あなたに背を向けられたら……私は死んでしまうわ」

「万里子、震えている。僕が怖いかい?」

「いいえ。ただ、唇が痛くて……キスは」


小さな声で万里子は嘘をついた。


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