愛を教えて
「マフラーは長めに頼む」


万里子と少し距離を取り、卓巳は口にした。


「長いほうがお好きなんですか?」

「いや、そうじゃなくて……ふたりで巻いてみたい」


さすがの万里子も絶句した。だが、卓巳も諦めない。


「外がいやなら邸の庭でもいい! その……若いころに何もしたことがないんだ。そういったカップルのイベントというか、楽しみというか……だから」

「庭でよかったら」


万里子の返事に卓巳は有頂天になり、更に願望を口にする。


「来年は、同じセーターをもう一枚編んでくれ」

「同じ、ですか?」

「そうだ……君の分を」


卓巳の中で、愛し合うふたりにペアルックは外せないアイテムだった。


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