愛を教えて
「そのほうがよろしいじゃありませんか? 奥様も気が楽だと思いますけど」


悠里も先輩である美和子に同意する。


しかし、万里子にはとてもそうは思えなかった。


「大勢いると大変なことは多いでしょう。でも、協力し合えれば喜びも広がるわ。過去にこだわって、未来の可能性を潰してしまうのは愚かだと、卓巳さんが私に教えてくださいました。彼は人を許すこともご存じだし、器の大きな方よ」

「でも……」


美和子は黙り込むが、悠里は合点がいかないようだ。とくに、太一郎を許すなど論外だと、悠里の目が言っている。


「それにね、家族が一気に減ってしまったら、十人を超えるメイドなんていらなくなるんじゃないかしら? もちろん、違うお仕事は探していただけるでしょうけど」


そこまではふたりとも思い至らなかったらしい。

多少不自由な点はあるものの、給料や福利厚生には恵まれた職場だった。


そんなふたりを見ながら、万里子は意を決したように言う。


「今日の昼食は、私が太一郎さんの部屋に運びます」


ふたりが顔面蒼白になり、引き止めたのは言うまでもない。

しかし、それに従う万里子ではなかった。


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